目次
カラダを健康に保つためには、毎日のお手入れと定期的な検診とメンテナンスが必要ですね。住まいも同じように毎日のお手入れと定期的な点検とメンテナンスが必要です。
今回は、建物の耐久性に関わるシロアリについて専門家に教えていただきました。
シロアリの基礎知識
まずは、シロアリの基礎知識から。
シロアリといっても見たことがない人が多いと思います。でも、もしかしたらすでに目にしているかもしれません。
普通のアリと思って見ていたのが、実はシロアリだったかもしれませんよ。
シロアリは、アリじゃない?!
シロアリは、その姿からアリと思われがちですが、昆虫綱ゴキブリ目シロアリ科 (Termitidae)といって、実はゴキブリの仲間なんです!
主に木造住宅などに棲みついて、木材(稀にコンクリートやプラスチック)を食い荒らす害虫として嫌われていますが、自然界においては倒木や落ち葉などを土に返すためにセルロースの分解に携わる重要な働きを持つ生物でもあります。
でも、自宅を土に返されたら....たまりませんね。
シロアリの被害は50%
ある調査によるとシロアリの被害を受けている建物の数は、なんと50%近くあると言われています。『もしかしてウチにもいるの?』と思われるかもしれませんが、調査してみないことには判断がつかないのです。
専門家に調査を依頼し、シロアリの存在が確認された時は、すみやかに駆除をする必要があります。
シロアリの種類
シロアリといってもたくさんの種類があるのですが、日本には大きく分けて3種類のシロアリが存在するそうです。
- イエシロアリ
- ヤマトシロアリ
- アメリカカンザイシロアリ
このうちイエシロアリとヤマトシロアリはミゾガシラシロアリ科に属し、アメリカカンザイシロアリはレイビシロアリ科に属しています。つまり別の種類のシロアリと考えなければなりません。
体長: 7.4〜9.4mm
生息域: 本州南岸以南
好む土質:粘土分の少ない砂質土
好む木材:新材、乾いた部分も好物
群飛活動:主に6月から7月の夕方から夜間にかけて飛び回る
体長: 4.5〜7.5mm
生息域: 北海道を除く日本全土
好む土質:粘土分の多い植質土
好む木材:湿った腐朽した木材
群飛活動:4月中旬から5月下旬の昼間特に雨上がりの日に飛び回る
体長: 8〜11mm
生息域: 本州南岸以南
好む土質:基本的に土壌中には生息しない
好む木材:その名の通り乾いた木材
群飛活動:主に6月から7月に飛び回る
このうちアメリカカンザイシロアリについて、被害が拡大しているということなので、調査と駆除の現場を取材してきました。
シロアリに薬剤は効かない⁉️
最近、防蟻処理(シロアリ対策として薬剤を塗布または注入)しているにも関わらず、シロアリの被害にあったという方が数多く見受けられます。住宅を新築する際は、防蟻処理(シロアリ対策)が義務付けられていますが、その効果がどれくらいあるのかや何年くらい効果が持続するのか、あまり知られていません。
薬剤による防蟻処理(シロアリ対策)の効果の持続期間は、一般的に5年と言われています。これは薬剤の特性上仕方のないことで、5年に1回はシロアリの被害にあっていないか点検し、再施工する必要があります。
もちろんシロアリ被害に対する保証も薬剤の効果がなくなると共に切れてしまいます(つまり5年保証)。しかしながら、5年で薬剤が切れることや保証が終わってしまうことを知らない方も多く、これがシロアリ被害を増大させる一つの要因となっています。
シロアリ対策の3つの方法
シロアリ対策には大きく分けて3つの方法があります。※初めはホウ酸の説明になっていますが、他の材料をクリックすると、それぞれ説明が見られます。
持続期間は5年
効果は半永久的
どの方法も防蟻処理(シロアリ対策)として有効なのですが、ホウ酸以外はアメリカカンザイシロアリに対して効果はありません。
防蟻剤が健康被害を⁉︎
もう一つ問題なのは、合成殺虫剤による防蟻処理は健康被害を及ぼす可能性があるということです。
新築時は人が暮らす前(建物の建築中)に防蟻処理(施工)をしますので、薬剤の匂いや問題を訴えることはあまりありません。
しかし、5年後の点検・再施工時にはそこで生活されているわけですから、かなり気をつけないと体調不良や健康被害を訴えることになりかねません。
再施工時には、ホウ酸などの安全な材料による防蟻処理に切り替えた方がいいですね。
シロアリ被害の調査と処理に行ってきました!
今回、シロアリの中でも最も危険とされているアメリカカンザイシロアリの調査と駆除の現場に、行ってきました。
アメリカカンザイシロアリは、外から飛んできて家の中に侵入してくる場合もありますが、時に、アンティーク家具や古い家具の中に潜んでいて、そこから家の中に入り込むこともあります。
『この辺でシロアリ被害なんて聞いたことないよ』と勝手に安心しないように。いつ、どこから侵入してくるかわからないのがシロアリなんです。
あなたは、この写真から「シロアリ被害」見つけることはできますか?
この写真の部屋はアメリカカンザイの被害にあっているのですが、みなさんは見つけられますか?
この部屋のシロアリ被害は、畳と柱、そして障子にまで及んでいました。ちょっと見ただけでは全然わかりませんよね。実際の写真をお見せしますと、
このように障子の桟が中まで食べられていました。さらにこの周りの柱や敷居も食べられており被害は広範囲に及んでいます。しかも、柱は2階の天井部分まで食べられていて、その被害の大きさに驚きました。
実際、この建物は1階の床から屋根裏まで、ほとんどの部分に被害がありその対策を考えると気が遠くなる思いです。
どうしてこんなにも被害が拡大するまでほおっておいたのと思われるかもしれませんが、アメリカカンザイシロアリの基本的な知識を持っていないと、シロアリにやられているとは考えもしないんです。
では、次にアメリカカンザイシロアリの被害にあっているか見つける方法をお伝えしたいと思います。
アメリカカンザイシロアリの穴
アメリカカンザイシロアリは、木を食い荒らしていくときに木材の中にトンネルを作り巣とします。
(ここで注意して欲しいのは、他のシロアリと違って土の蟻道は作りません)
そして、ある程度巣の中に糞粒がたまってくると、木材の表面に小さい穴(直径1mmくらいまで)を開け、そこから糞粒を外に押し出すようになります。
これを蹴り出し穴(けりだしあな)といいます。駆除や予防の際は、この蹴り出し穴を見つけることが最も重要となります。
この現場では玄関にこの蹴り出し穴がありました。
そして、その下にはたくさんの糞粒が見つかったことからアメリカカンザイのシロアリの被害が発生していることが確実となりました。
この糞粒は大きさは0.7mmから1mmほどの俵状で、6本の筋が入った粒です。
色は食べた木材の色がそのまま出ます。
淡い色の木材は淡い色の糞粒、濃い色の木材は濃い色の糞粒、いろいろな色が混ざって固まって、盛り塩のように落ちていることが多いです。
糞粒自体はそのまま置いておいても何かに影響があることはありませんが、掃除をしてしまうと、被害箇所の特定が難しくなってしまう場合がありますので、調査までは動かさないほうがいいでしょう。
被害状況
今回調査にうかがった家の被害状況は、1階の床から天井裏の小屋組まで広範囲にわたっています。
たった1箇所の蹴り出し穴から始まって家全体まで被害が及んでいるとは想像もつきませんでした。
写真は糞粒の状況ですが、床下から天井裏まで至る所で見つかりました。
写真は蹴り出し穴ですが、とても小さくて、注意して見ないと、これが蹴り出し穴とは思いません。
このような被害にあったら、すぐに駆除と対策を打たなければなりませんね。
シロアリ駆除と対策
被害状況がわかったところで、いよいよアメリカカンザイシロアリの駆除と対策に入ります。
実際には、調査と同時に駆除も行うこともあり、被害状況に合わせて進めていくそうです。
駆除と対策の準備
駆除に必要な道具と、建物を汚さないように養生をすることから始めます。
材料と施工機器は、規定の濃度に調整されたホウ酸水溶液と噴霧器です。そのほかにも、床下や天井裏を照らすためのLEDライトや照明器具、延長コードが用意されています。
また、建物の養生は施工する部分だけでなく、施工する場所に向かうまでの動線にも丁寧に養生シートを施工していきます。ここまでやってくれると安心ですね。
アメリカカンザイシロアリの駆除
準備ができたら、いよいよ駆除に移ります。調査で見つけた蹴り出し穴からホウ酸水溶液を注入することでシロアリの駆除を行います。
シロアリの巣は蹴り出し穴からかなり先の方まで続いていることがあり、今回の現場でも3〜4m先からホウ酸水溶液が漏れてくることもありました。
どこまで被害が及んでいるのか見た目にはわかりませんが、ホウ酸水溶液を注入することでシロアリの巣がどこまで続いているのか分かるし、そこまで駆除がされていることが分かるので安心ですね。
対策もしっかり行う
アメリカカンザイシロアリをしっかり駆除したら、これ以上被害が進まないように被害のあった周りにも防蟻対策を施します。
このホウ酸水溶液(株式会社日本ボレイト製)は、イエシロアリやヤマトシロアリにも効果があるだけでなく、木材の劣化を防ぐ効果もあるということで、たとえシロアリの被害にあったとしても、シロアリ駆除の後の対策を打つことによって建物の劣化対策につながりますね。
一般的なシロアリ駆除だと合成殺虫剤を撒くだけなので、シロアリは駆除できても建物の劣化対策は出来ないので大きな違いになります。
どうせやるなら、やはり「ホウ酸を使ったシロアリ対策」が良いことがわかりました。
被害の確認
最後に調査と駆除で見つけた糞粒の量を確認して見ました。
はかりを持ち合わせていなかったので、正確な重さはわかりませんが、持った感じ約2kgと言ったところでしょうか。ものすごい量です。
今回は、被害は広範囲に渡っていましたが、致命的な問題(例えば柱がスカスカになっているとか)はなさそうなので、このあと改修工事を行って、住み続けることができそうです。
早期発見でよかったですね!!
まとめ
小さな穴から始まったアメリカカンザイシロアリの調査と対策は、一先ず終わりとなります。
普通のシロアリと違って、地面から入ってくるわけではないので防御も難しく、発見も困難なことが今回の取材で分かりました。
また、ホウ酸処理により普通のシロアリだけでなく、アメリカカンザイシロアリ にも効果があることと、処理することで木材の劣化防止につながることがわかったことも大きな収穫となりました。
また、現場において驚いたことは駆除や施工中に嫌な匂いがしないことです。
ふつうのシロアリ駆除の現場では合成殺虫剤の嫌な匂いがしたり刺激を受けたりすることがあったのですが、天然素材のホウ酸はその問題がないので安心ですね。私の住まいも、もしシロアリが発生したらホウ酸で処理しようと思いますが、シロアリが発生する前にホウ酸によるシロアリ対策をやっておけば、建物も長持ちするので早めにやっておいた方が良さそうですね。
みなさまも、シロアリの被害には十分にお気をつけください。
取材協力:日本ボレイト株式会社
問合せ先:株式会社Green Bridge(グリーンブリッジ)→問い合わせフォーム
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