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暮らしの中の安心や安全を確実なものにするために、メーカーを含めつくり手側は常に次々と新しい技術や製品を生み出しています。しかしながら、施工する側や住まい手側が十分に理解していないことが多く、本当に安心できる住まいになっていないことが多いようです。今回は、クライアントの依頼を受けて、施工について細心の注意を払うべきことと住まい手側の実態をお伝えし、次の開発につなげていただける様な講演を行いました。
交通事故よりリスクの高い建物火災
交通事故件数はこの10年で約半分に減っています(95.3万件→53.7万件)。これは、車の安全性能が飛躍的に高まってきたことによるもので、安全装置の進化とともにさらに減少するものと考えられます。一方で、建物火災は4分の1程度しか減少しておらず、自動車ほど安全性が高まっているとは言いがたい状況です。
自動車事故は、単独の事故もありますが相手があっての事故が多いので、自身の運転ミスだけでなく他者によるところもあります。その一方で、建物の火災(特に自宅)に関しては、その原因のほとんどが、住まい手側に問題が多いことが特徴としてあげられます。
電気火災の5大要因
電気は安全と思われがちですが、あくまで電化製品が普及するまでの話です。現在の建物火災は電気に関わるものがもっとも多く、しかも見えない部分で起こっていることが多いのが特徴です。
ここに、電気火災の5大要因をあげてみました。
- 電気ストーブ
- コード
- 差込プラグ
- コンセント
- 電子レンジ
電気ストーブはイメージがつくと思いますが、2位以下のコードや差込プラグ、コンセントなどは想像したこともないかも知れません。古いお宅に行くとかなり年代物の延長コードを使っているところがありますが、かなり危険なことが多いので注意が必要です。そもそも、電気コードの寿命は20〜30年と言われているので、古いコードを使い続けていること自体が火災の原因となっていることがあります。
電気コード
電気コードは、半永久的にその安全性が保証されているものではありません。家中に張り巡らされて電気配線も、もちろん寿命があります。
現代の住宅は家電住宅と言われるほど電気を利用していますが、家中に張り巡らされた電気配線の長さは、約1000mにもなります。日頃見ることはできませんが、壁の中や天井裏、床下などに縦横無尽に張り巡らされています。
この維持管理は一般の方ではとてもできませんので、どうしても疎かになりがちです。車のように車検の時に専用のコンピュータで点検できるといいのですが、住宅はそのようになっていないのが現状です。
プラグとコンセント
次に、プラグとコンセントですが、一般的な住宅の場合50ヶ所前後のコンセントがあります。そんなにあるの?と思われるかも知れませんが、実際に調べてみると想像以上に多いことに驚かされます。
一部屋だけをみたとしても、数カ所のコンセントがあり、さらに、差込口が不足しているからといって、延長コードが取り付けられている場合があります。
建物に設置してあるコンセントは50ヶ所前後ですが、実際には、延長コードを含めるとそれ以上のコンセントがあることがわかります。当然のことながら、それに合わせて差込側のプラグが存在しますので、電気火災のリスクがかなり高いことがおわかりいただけると思います。
電気火災のメカニズム
電気火災のなかで、電気ストーブや電子レンジによる火災は、目に見える場所で起こるので対処しやすい場所ですが、電気配線やプラグ、コンセントなどは、見えないところで起きるので、寝ている時や外出中に起きることがあり、大変危険な火災だと考えられます。
では、なぜ電気配線やプラグなどで火災が発生するのでしょうか。
電気コードの劣化
電気コードの劣化により火災が発生することがあります。電気コードの耐用年数は20〜30年とされていますが、次のような環境下にあるとき、想定以上に劣化が進むとされています。
- 電気的要因(過電圧や過電流等)
- 電線ケーブルの内部への浸水
- 熱的要因(低音、高温による物性の低下)
- 紫外線・オゾンや塩分付着(物性低下)
- ネズミやシロアリによる食害
- カビ等の微生物による劣化
- 施工不良
など。こうしてみると、私たちは普通に生活しているだけで、電気コードを劣化させる行動を取っているように感じますね。電化製品が増えることによって、当然のことながら電気コードに負荷をかけていますし、屋根裏の温度は夏は高温になり冬は低温になるなどかなり厳しい環境にさられていることがわかります。そして、ネズミやシロアリによる食害やカビなどによる劣化については、定期的な点検をしていない限り防げないものであることもわかります。
良かれと思った行為が仇となる
(出典 NITE:独立行政法人製品評価技術基盤機構)
電化製品は、物によってコードの長さは様々です。短ければ延長コードが必要になるし、長ければ邪魔になるし、思うような長さでないものがほとんどです。最近では100円ショップなどで電気コードを束ねるバンドなどが多種販売されていますが、それが電気火災の原因となる場合があるので注意が必要です。ごちゃごちゃした配線をせっかく綺麗にまとめたつもりなのに、それが火災の原因になるなんて、想像だにしないですよね。
動画では束ねたコードが発熱し、火災が起きる様子をメカニズムを実験したものです。一般的によくある状況なので、このような配線状態を見かけたらすぐに改善しましょう。
プラグの差し込み方が火災の原因に
電気火災の原因の一つにプラグの差し込み方があります。まず、プラグには明確に差し込む方向が決まっており、それを間違うと電気配線や電化製品に帯電する恐れがあります。するとプラグやコンセントにホコリがたまりやすくなり、トラッキング(ショート)により火災が発生することがあります。基本的には、コンセントの左側が電圧のかからない0V(アース側)となるので、プラグもそれに合わせるとOKです。コンセントを抜き差しした時に火花が散ることがありますよね。それがトラッキングです。
それから、プラグはコンセントとの隙間が生じないようにしっかり奥まで差し込みましょう。少しでも隙間があると、トラッキングと呼ばれる現象が起き、そのとき発生した火花がホコリに引火して火災に繋がります。
太陽光発電システムからの出火
サイレント火災とも言うべき電気火災が太陽光発電システムからの火災です。太陽光発電システムはパネルが屋根の上に乗っているので、点検することも少なく火災が発生しても気づくのに遅れると言う問題があります。
太陽光パネルからの火災は、見えないところで起きる火災だと言うこと。家電製品などであれば出かける際にコンセントを抜いたりすることで防ぐことはできますが、太陽光発電は常に発電し続けると言うメリットでもありデメリットもあります。長期間旅行などで住まいを空けている時に火災が発生したとしても、気づくのに遅れ取り返しのつかない事になりかねません。
火災発生の原因の一つに、施工不良という住まい手にはどうすることもできない問題があります。例えば、太陽光パネルで発電した電気を送るケーブルが正しく施工されていないと、その部分から出火することがあります。ケーブルがパネルに挟まれることで正しく電気を流すことができなくなり、そこから出火したり、ケーブルを止めるためのステープル(ホッチキス)などによってケーブルを傷つけたりすると、そこから劣化が始まり出火につながることがあります。
いくらいい製品であっても、正しい施工をしないと暮らしに役立つはずのものが、生活を脅かすものになりかねませんので、業者選びもしっかり行うことをお勧めします。
住宅火災から家を守るために
暮らしが豊かになるほどに電気の使用量は増えており、今後はスマートホームなどの普及により電気の使用量はさらに増えると予想されます。また、住まいの長寿命化により住まいの建て替えサイクルよりも先に、電気コードの寿命の方が先になることが予想されますので、今まで以上に定期点検の重要さが増してきます。
自分の住まいですから、できれば自分で点検したいところですがそうもいかないのが現実です。そこで、災害にも火災にも強い電気配電システムが必要となります。現在、いくつかのメーカーで防災や減災を考えた配電盤を開発・発売しており、ユーザー側で安全を確保することが可能となってきました。例えば、強い地震が来たら自動的にブレーカーを落とすシステムや、漏電などを見つけたら、その回路だけを止めて警報を鳴らすシステムなど、とても使いやすいシステムがありますので、積極的に活用しましょう。最新商品については、日東工業株式会社様の開発中の商品などを参考にしております。
そして、住まいを電気火災から守るために、今すぐにできる安全対策をしっかり行いましょう。
- 差込みプラグを抜くときは、プラグ本体を持ちまっすぐに引き抜く。
- 差込みプラグは、しっかりとコンセントに差す。
- コードの上にはものを載せない。
- むやみにコードを束ねない。
- コードを柱などにステップル止めをするのはやめる。
- コンセントやコードに表示されている電気量を確認して使用する。
- 使わない電気製品のコードは、こまめに抜く。
問合せ先:株式会社Green Bridge(グリーンブリッジ)→問い合わせフォーム
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