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2030年までに持続可能な社会を作るという目標のもと、各企業や自治体がSDGs宣言を行い活動していますが、2030年の目標というより現在行なっている活動をSDGsに当てはめたものが多いのが気になります。
いまの延長では持続しないからSDGs
SDGsは2015年に国連において全会一致で採択されましたが、その前の15年間はMDGs(ミレニアム開発目標)として、国際社会の支援を必要とする課題に対して2015年までに達成させるべく活動していました。その起源は1972年にローマクラブが発表した『成長の限界』と考えられ、「人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する」という考え方に基づいています。
食料の問題は、有機肥料から化学肥料へと変わり、単位作付け面積当たりの収穫量も増えていることから多少は改善されてきましたが、環境問題については、その当時よりも加速的に悪化しているのが現状です。
常識を疑う
人は経験の中から色々なことを学ぶようで、例えば、風景の写真をみて「遠い」「近い」と分かるようになる為には「遠いところは小さく見える」とか「遠いところは霞んで見える(色が違って見える)」など経験を積む必要があるそうです。その経験がないと単なる2次元として認識されてしまうというから驚きです。ゴミはゴミ処理場で処分するのが当たり前だと思っている人にとっては、要らないものはゴミ箱に捨てれば(目の前からなくなれば)終わりだと思っているのが現実ではないでしょうか。そもそも、そのゴミは本当に不要なものなのでしょうか?捨てたゴミはどこにいくのでしょうか?
ゴミの全てがゴミではない
さて、ゴミがどのように処理されているのか知らない人にとっては、ゴミはゴミ箱に捨てればそれでいいというのが常識になっています。燃えるか燃えないかの区別はついたとしても、その先に多くの手間をかけて分類していることを知らないので、簡単にゴミ箱に捨ててしまいます。
ゴミの分別は(自治体によって違いはありますが)10種類くらいに分けられていますが、大きくは燃えるものと燃えないもの、資源として再利用できるものと出来ないもの(埋め立て)に分けられています。この仕分け作業はとても大変で、多くの労力とコストがかけられています。それに、ゴミを収集する為にも多くの人や車が必要になり、捨てる必要がないものまで捨ててしまうと大きな無駄が発生しますし、ゴミ処理においても必要のない負荷がかかってしまいます。都市部なら人口が多い分問題にならないのかもしれませんが、地方の場合は大きな問題としてのし掛かってきます。
そもそも、要らないものは全部ゴミとして捨ててしまうことは、資源の枯渇を誘発し物を大切にする心をなくし、食物の連鎖を考えたときに大切な有機肥料を失うことになります。勿体無いの精神を持った日本人としては少し残念な気持ちになります。
ゴミゼロ宣言した町”上勝”
徳島県にある『葉っぱの町』として知られる上勝町は、人口1500人の小さな町です。高齢化も進みこのままでは限界がくるとなった2003年に『上勝町ゼロ・ウェイスト宣言』を行い、未来の子供たちにきれいな空気やおいしい水、豊かな大地を継承するため、2020年までに上勝町のゴミをゼロにすることを決意しました。
その宣言は、次の通り。
- 地球を汚さない人づくりに努めます!
- ごみの再利用・再資源化を進め、2020年までに焼却・埋め立て処分をなくす最善の努力をします。
- 地球環境をよくするため世界中に多くの仲間をつくります!
その宣言通り上勝町は行動を起こし、町民と一体になってごみゼロの町として世界中に認知されるようになりました。今では町の人口の倍近くの年間2600人もの見学者が訪れるというから驚きです。筆者も見学してきましたが、ごみを34種類に分別しそれぞれに「町の収入になるもの」「町の支出になるもの」が分かるように仕分けされているので、次に同じものを買う時、再資源化されるものを買う意識が持てる点に興味を持ちました。例えば割り箸は木なので燃やせばいいと思いがちですが、これも処理するにはお金がかかります。なので、使い捨ての箸をやめて長く使えるものを使うようになるわけです。
ちなみに、他の自治体よりも細かい分類を理解してもらうのはとても大変だったようで、他の自治体と比べてもかなり細かい分別表があります。注目すべき点は、『生ゴミは自宅で堆肥化』とされている点です。つまり自然からもらったものは自然に還すのが一番というとてもシンプルで理想的な考えです。何でもかんでも燃やして埋めるというのは、持続可能な社会を作る上で大きな問題となっていることを理解したほうがいいですね。
神山町は、途方も無い構想と思われたゼロ・ウェイスト宣言を『どうして捨ててはいけないのか』という意味をしっかりと理解させたことで、町民の意識が変わり行動も変わったといういいお手本となっています。この活動こそがSDGsの本質を捉えたものです。こ未来に何を残したいのか、そこからSDGsに取り組んでいくべきでしょうね。
生き生きとした上勝町を体験しよう!
この話には続きがあります。ゼロ・ウェイストを実現するために生ゴミの処理は各家庭で行うことにし、その他のゴミは町民が自ら分別する”ごみステーション”を設置することで焼却場はなくすことができました。そして、世界中から注目されることとなった上勝町では2020年4月には『上勝町ゼロ・ウェイストセンター”WHY”』を稼働させ、ゼロ・ウェイストを学べる施設を併設したごみセンターを稼働させます。そして驚くべきことにこの施設には多くのリサイクル製品が使われていると言うことです。例えば施設の窓はリサイクルされたものを上手にデザインして使っているので、新しい建物でありながらとても親しみを感じるものになっています。本来なら捨てられていたものが再利用され息を吹き返したことで建物に命が宿ったのかもしれませんね。とても素敵なことです。
ここには、ごみセンターを見学する人のための宿泊施設が併設され、ゼロ・ウェイストを学ぶだけでなく上勝町の自然を楽しむ拠点としても活用できるようになっています。こういった施設の場合、企業の幹部や自治体の人たちなどが集まりがちですが、ぜひご家族や友人達と行ってもらいたい場所です。この施設は周りは自然に囲まれているので家族でいろいろなことを体験できる”場”となっています。宿泊施設は4月25日オープン予定です。
SDGsとして大切なことを学びました
上勝町の取り組みで、SDGsを実践する上で大切なことを学びました。それは、みんなが参加することとそのメリットがわかりやすい取り組みにする事が大切だと言う事です。SDGsのなかで重要なファクターとなっているのが”ステークホルダー(利害関係者)”の存在です。それは、川上から川下まで全てを網羅した上で目標の設定や実行すべき行動を考えるのですが、どうしても網羅できない事があります。しかしながら、上勝町のように目的を明確にし目標・期限をしっかりと決める事で問題が浮き彫りになり、それぞれが問題解決に向けてどう行動すればいいのかを考える事ができるのです。この目的が不明瞭なまま目標を設定したり、期限を明確に決めない事で問題はうやむやになり、簡単に先延ばしされることになるのです。
SDGsの目標設定のために必要なことは、
- 目的を明確にする
- ビジョン(あるべき姿)を明確にする
- 目標と期日を決める
と言うことになります。
この部分が不十分だとしたら、その目標はおそらく達成できないと思います。たとえ達成したとしても、それはもともと出来たことであって人にとっても組織にとっても意味をなさない取り組みになる事でしょう。
上勝町では、
目的:未来の子供たちにきれいな空気やおいしい水、豊かな大地を継承する
ビジョン:ゴミの焼却場と埋め立て処分を無くす
目標:2020年までにゴミをゼロにする
とそれぞれを明確にしたことで、実現する事ができた上にさらなる発展まで実現する事ができたのです。
このように目的を明確にすることが2030年までに持続可能な社会を作り上げる原動力になりますので、2030年にありたい姿をイメージし、目標を持ってSDGsに取り組んでいきましょう!
SDGsに取り組みたい方はこちら:→問い合わせフォーム
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