目次
ていねいな暮らしをお勧めしていく中で、お客様より色々なご相談を受けます。
熊本のやさしい家はそんなお客様の願いをかたちにした、そこに暮らす人に優しい家です。
きっかけは熊本大地震でした
今回の地震でご自宅が全壊という大変な被害を被り、アパート暮らしをしていた今回のお客様。カラダに優しい食材だけを使ったランチを楽しむことができる朝倉カフェ(レジナ運営)の常連のお客様でした。
「アパートだと体もきついし自分の家を建てたい。レジナさんに相談したくて来ました。」
というご相談から始まりました。
東日本大震災で被災した私としても、なんとかしてあげたいという気持ちが強く、かといって大地震が起こった後では、平常時とは全く状況が違いますから、急ぎ現地調査に入りました。
地震の後は、以前と地盤の状況は変わっている可能性がありますので、現地調査には静岡から地盤調査のプロを、東京から断熱のプロを帯同し熊本へ入りました。
着工まで2年待ち
色々な人にご相談したところ、知人より信頼できる工務店をご紹介いただけるというので、早速熊本へ向かいました。お客様と合流し建設予定地を確認。地盤のプロはすでに建設予定地周辺の地盤状況を調査してくれており、建築に申し分ない地盤強度だとお墨付きをいただきました(後日、正式な地盤調査を行なっています)。
現地を確認した後は、ご紹介いただける工務店の復興専用のモデルハウスの見学へ。他の工務店のモデルハウスもいくつか見学しましたが、やはりご紹介先の工務店が一番かなという事になりました。
しかし、建築時期を聞いたところ、なんと2年待ち。もともと大病を患っているお客様に、そんな時間はありません。さてどうしたものかと色々と当たりましたが、すぐに建築してくれるところはありません。お客様も色々と工務店をまわってみましたが、すぐに建築してくれると言ってくれたところは、希望した住まいを作ることが出来ないばかりか、心が通わないと嘆いておられました。
家を建ててくれませんか
いよいよ行き詰まって来たとき、お客様から予想外の言葉が。
「家を建ててくれませんか」
この時から、熊本のやさしい家のプロジェクトが始まりました。
熊本のやさしい家
震災から復興を目指す熊本の住宅。
大病を患っているお客様が安心して暮らすことができる住まい。
周りの環境に溶け込むデザイン。
電磁波フリーで、できるだけ化学物質のない室内環境。
このようなコンセプトを形にしていきました。
熊本のやさしい家の特徴
基本的な考えは、人に優しく環境にも優しい住宅であることです。この建物に使う素材をエコレ基準※で吟味し、自然素材(木材、断熱材、防蟻剤、壁、塗料)を積極的に使い環境負荷と人への負荷をできるだけ減らした住宅です。
※エコレ基準とはドイツの建築生物学”バウビオロギー”の考えを取り入れ、空気質+温度+湿度+電磁波に対して一定の基準を設けています。特に、電磁波についてはスウェーデンの電磁波に対する安全基準”MPR−Ⅱ”に準拠した基準値を設けており、安全な環境を目指しています。
地震につよいこと、災害に備えること、人に優しいこと
大地震後に注目されるのが、倒壊した家と無傷だった家の違い。これは耐震性能と呼ばれるものですが耐震等級として表されます。耐震等級の最上級は等級3。もちろんこの耐震性能を有することが前提の建物となります。
また、大地震の時に避難の妨げとなるのが家具の倒壊や建具の損壊による避難経路が絶たれる問題。避難経路が絶たれ逃げ遅れることで、2次被害にあう恐れがあります。そこで、家具はできるだけ作り付けにすることで、そもそも倒れる恐れのあるものを置かないこと前提に避難経路を確保することを考えました。細々とした収納を作るのではなく、大きな収納スペースを作って収納力と使いやすさ、そして災害時にも安心な非常用品も収納することにしました。
それから、複数の避難経路を想定してプランすることで、万が一の大地震でも安全に避難できるような導線を確保しています。
無駄なものは徹底的に省く
現代の住まいは、とにかく利便性が高く室内は夜でも昼間のように明るくなりました。家中のいたるところにコンセントがあり、部屋にはたくさんの照明が並んでいます。
従来の建物(35年前)と比べてみると
コンセントの数は3倍(16箇所から48箇所へ)
照明の数は2.6倍(16箇所から42箇所へ)
分電盤の回路の数は4倍(6回路から23箇所へ)
と、電気の利便性によって暮らしが成り立っていることがわかりますね。
その一方で、電気の使用量はこの50年で10倍になっているんですよ。省エネのはずが増エネになっているなんて驚きですね。現在の住まいは省エネになったと言われていますが、利便性を求めるあまりここのエネルギーは少なくなっていても全体で見ればエネルギー量は増えている。
過剰なものはできるだけ省いてシンプルな建物にすることも心がけることが大切なんです。
空間は別れても気配を感じられる寝室
奥様の希望は夫婦でいつも一緒にいること。もちろん寝室も同じがいい。でも、自分の体調がわるいときは旦那さまに迷惑をかけたくないということでした。
そこで、いつもは一つの寝室として使え、体調がわるいときは2つに分けて使うことができる寝室としました。間を仕切るのは天然の杉でつくった可動間仕切りです。既製品を使わないことで壁で仕切ったときでも圧迫感を与えないようにしています。
それから、空間を分けてもそこにお互いの存在が感じられるように仕切りの上部は開放しています。
ほんの少しの明かりや音、呼吸などを共有することでお互いの存在をしっかり感じ取れる工夫がなされています。もちろん空調も1つで済むので省エネにも効果がありますよ。
優しい家は自然と笑顔になる
震災で家を失った悲しみを乗りこえられる住まいを提供したいという想いから始まったこの”熊本の優しい家”プロジェクトですが、お施主様の最高の笑顔で完成を迎えることができました。初めての場所、職人さん不足、短工期での施工と大変なこともたくさんありましたが、最高の笑顔で締めくくることができました。
これからもたくさんの笑顔をつくっていきます。(荒木康史)
ご相談・問い合わせ先
または問い合わせフォームよりご相談ください。
運営する暮らしのサロンのセミナーの先行予約もいち早くご案内!
ぜひメールマガジンにご登録ください。