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シロアリ被害が拡がっているという情報のもと、シロアリ調査と駆除の現場取材をした筆者。よくよく考えてみると『なんで防蟻処理しているのにシロアリ被害に会うの?』という疑問が湧き、日本ボレイトさんの1級ホウ酸施工士認定講座を受講してきました。受講内容をもとに現状の問題点と解決策を探ります。
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ホウ酸施工士講座では建物の劣化対策を学びます
ホウ酸施工士といってもピンと来ないかもしれませんが、住まいを劣化から守るのを主な目的とした資格です。いくらいい建物を建てたとしても、長持ちしないと困ります。日本の住宅の建て替えサイクルが30年前後と言われているので、ローン期間にも及ばない状況を改善するためにも取得しておく必要がある資格ですね。
充実の講義内容
講座は座学と実技に分かれますが、今回は座学の受講となります。
1日目は新築の劣化対策、2日目は既存住宅の劣化対策と2日間の講座。休憩はお昼休みくらいで、かなり濃密な内容です。それぞれの講座に対して記述形式の試験があり、難易度も高いので集中して講義を受けないと再受講になりかねません。
主な講義内容
- 現在の建物の問題点
- シロアリ対策(防蟻)と劣化対策の違いについて
- シロアリ対策に使われている薬剤とその危険性
- ホウ酸塩を使った世界基準の劣化対策
- 正しい施工方法で長期間家を守る
などなど。
新築住宅なら邪魔なものがないので施工も比較的簡単ですが、既存住宅の場合はシロアリの発見も住まいの劣化対策の施工も大変です!専門の教育を受けていないと間違った施工に繋がるのでしっかり学ぶことが大切です。
ホウ酸施工士は他のシロアリ施工資格よりも徹底した教育
筆者は、室内空気環境の問題から薬剤を使わないシロアリ対策の資格も保有しています。この方法だと住まいの中に合成殺虫剤(農薬)を撒かなくて済むのと、アメリカでも昔から認められている安全な方法だからです。
今回受講したホウ酸施工士は、セントリコンシステムで学んだことよりも、さらに多くの知識と経験を必要とします。どちらも同じシロアリ対策なのですが、安全面からも劣化対策の面からもホウ酸施工士に頼んだ方が安心できると感じました。
その理由の一つが知識の深さ。シロアリの生態を熟知することで、被害を未然に防げます。もう一つが、住んでいる人に煩わしい思いをさせないこと。一度施工してしまえば、5年に1回の点検を受けるだけで安心が手に入る点です。私が持っているセントリコンシステムでは1〜2ヶ月に1回の定期点検が必要なのでお客様も施工した側もかなり大変なんです。それにコストもかかるのでオススメしづらい面もありました。
これらの点を考えると、ホウ酸はお客様の立場に立った時の安心感が違いますね。
シロアリ対策してるのにシロアリ被害の謎⁉︎
構造耐力上主要な部分である柱、筋かい及び土台のうち、地面から1m以内の部分には、有効な防腐措置を講ずるとともに、必要に応じて、しろありその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならない。
安心・安全な建物を国民に提供するために、建築基準法施行令49条2項にはこのように劣化対策の必要性が明記されています。ここに必要に応じてとありますが、今や日本全土にシロアリはいますので、シロアリを含め害虫に対する対策を打つことは当たり前のことです。
でも、シロアリ被害が減らない(逆に増えている?)のはどうしてなのでしょうか?
シロアリ被害の実態
2013年に国土交通省の調査によると、約30%の住宅がシロアリや腐朽菌やカビの被害にあっていることがわかりました。これは築年数を問わないものですが、比較的築年数の浅いものでも20%くらいの住宅に被害が出ています。一般的にシロアリの保証は5年なのですが、保証期間内でも10%ほどの被害が確認されているようなので、有効な防腐処置やシロアリ対策がなされているとは言えませんね。
シロアリ被害は瑕疵担保責任の対象外!
建築基準法では建物の劣化を防ぐよう何らかの策を講じることとなています。これは、住宅の土台や柱が腐ったりシロアリの被害にあうことで、耐震性能が劣ることを防ぐ目的があります。この30年、日本全国で巨大地震が発生していることから、建物の耐震性能を強化する傾向にあり耐震・制振・免震など様々な策が講じられています。でも、いくら初期性能が良くなったとしても、土台や柱がガタガタになっていたのでは、せっかくの耐震性能を発揮できません。
また、法律により新築住宅は建物の主要構造部について10年間の保証がついているのですが、実はシロアリの被害については保証されていません。シロアリについては多くの住宅が5年保証をつけていますが、だからと言って
シロアリが出たら駆除すればいいや
というような考え方だと、いざという時に家族の生命や財産を守ることはできませんよ。初めからシロアリに強い家を建てることが必要なんです。
基本は建物の劣化を防ぐこと
建築基準法にも書いてあるように、建物の劣化を防ぎ住まいを長持ちさせることが最も大切なことです。その建物を劣化させる一つの要因としてシロアリの問題があるわけで、シロアリがいなくなれば家が長持ちするというわけではありません。
住まいが完成すると、土台や柱は見えなくなるのでどれくらい傷んでいるのか分かりませんし、例え見えていたとしてもその状態を判断することは難しいと言えます。でも、シロアリによる食害は目に見えて分かりますし、見た目も気持ち悪いので駆除しなきゃと思うのは自然のことです。
でも、シロアリを駆除したところで建物の劣化を防いだことにはならないのです。
建物劣化の2大原因!
建物の劣化は、腐れとシロアリにより起こります。
腐れとは木材腐朽菌による木材の劣化のことです。木材腐朽菌とは簡単に言えばキノコのことです。家にキノコが生えるの?と思うかもしれませんが、繁殖条件が整えばどこにでも発生します。その繁殖条件ですが、適度の水分、温度、酸素、栄養分が必要であり、湿度85%以上、木材含水率が20%以上、温度は20 - 30℃、高温多湿の環境を好みます。最近の住宅は高断熱住宅なのでこの条件に適した環境とも言え、例えば浴室の下などは腐朽菌にとって格好の条件が揃いやすい場所なので注意が必要です。
木材腐朽菌の繁殖により木材の強度が劣化すると建物の耐震性能が極端に低下します。木材の乾燥重量が腐朽により健全な状態の50%以下になると木材の強度は見込めなくなります。
同様に、シロアリも木材のセルロースをエサに繁殖しますので、木材が外部だけでなく内部からも食されることにより、木材の強度を著しく低下させることからその対策が必要とされています。
建物の中に農薬を撒く⁉️
一般的に使われいてる防腐防蟻剤は合成殺虫剤(農薬)です。合成殺虫剤と聞くと虫を殺すイメージですがその通りです。
また、新築時には土台や柱などに最初から薬剤を染み込ませたものが使われています。その代表的な成分は、クロム・銅・ヒ素と人体に直接入れるととても危険なものばかりです。これらは木材の中に染み込ませてあるので人体に対する影響は少ないようですが、なるべく触れない方が良さそうですね。
このように、合成殺虫剤を人体の近くで使いたくはないのですが、建物を劣化から守るためには必要なことなので仕方ありませんね。
家って農地でしたっけ?
合成殺虫剤(農薬)による劣化対策やシロアリ対策の効果は約5年しかありません。5年経ったらもう一度住まいに農薬を撒かなければ、劣化対策ができないんですよ!シロアリ被害について先述したように、5年を過ぎた頃からシロアリ被害が急激に増えてきます。つまり効果が薄れてきた証拠です。
大切な住まいをシロアリに食べられてはたまりませんから、5年経ったら住んでいる家の中に農薬を撒かなければならないんです。シロアリには効くかもしれませんが、ヒトにも影響がありそうなので躊躇してしまします。
でも、きちんと農薬(合成殺虫剤)を撒いていないとシロアリのリスクが残りますから、万が一シロアリの被害にあった時には、どっちにしても農薬を撒くことになるんですよ。
どうしたらいいんでしょうか?
欧米ではホウ酸を使った劣化対策が進んでいます
欧米では殺虫剤によるシロアリ対策もありますが、それは使用する場所とシロアリの種類によって使い分けているようで、住まいに関してはホウ酸を使った対策が進められています。理由はヒトやペットに優しいことと効果が持続すること。確かに、殺虫剤による駆除の方が効果が早く出るのですが、その効果は次第に薄れていくので、長期の対策には不向きです。
ホウ酸とは
ホウ酸はアメリカのカリフォルニアや西トルコで採れるホウ酸塩鉱物を生成して作られる無機鉱物です。このホウ酸は地球上のどこにでもあるもので、海水や淡水、岩石や植物に至るまであらゆるところに存在します。
ホウ酸の用途ですが、目薬やホウ酸ダンゴなどが有名ですね。そのほかにもガラス繊維や新聞紙を使った断熱材(セルロースファイバー)にも使われている比較的安全な鉱物です。
また、植物の生育にも必要な必須微量栄養素でもあり、このホウ酸がないと植物は枯れてしまいます。植物は、このホウ酸を地中から取り入れ成長しているわけです。
ホウ酸の効果
このホウ酸は、天然鉱物ですから環境が大きく変化しない限りその効果は持続します。農薬が5年しか効かないのに対して、ホウ酸はその効果がずーっと続くので再施工が必要ないんです。これなら安心ですね。
ホウ酸はシロアリ以外にも効果アリ!
代表的なのはゴキブリやアリ、キクイムシに効果があります。ホウ酸がゴキブリ製剤として最初に売られたのは1920年ごろで、ご家庭でも作っていた人も多いのではないでしょうか。それから、18世紀に作られたバイオリンの名器ストラディバリウスの防虫対策にホウ酸が使われているんですよ!数百年に渡り名器を保存し続けてきたホウ酸の力はすごいですね。
まとめ
今回、ホウ酸施工士講座を通してわかったことは、住まいを健康で長持ちさせることがいかに大変かということでした。法律通りにやっていれば自分の家は守れると思っていましたが、実は様々な問題があるということがわかりました。
正しい知識を持つことで、自分の財産と家族の生命を守れますので、この講座を多くの人に受講してもらいたいですね。今回の講座は専門家向けでしたが、この情報を一般の人向けに伝えていきたいと思いますので、準備が整ったらご案内したいと思います。
合わせて読みたい→[取材記事]シロアリの被害は想像を超えていました!
取材協力:日本ボレイト株式会社
問合せ先:株式会社Green Bridge(グリーンブリッジ)→問い合わせフォーム
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