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同じ時期に建てた家なのに、お隣さんはもうリフォームしてるけどうちは大丈夫なの?夢のマイホームを手に入れたのはいいけど、何年くらい持つのだろう。そんな疑問を持たれる方が増えています。今回はそんな疑問を持った筆者が、木造住宅の劣化対策現場へ取材に行ってきました。
木造住宅は長持ちしない?
『木は腐るから木造住宅はやめた方がいいと言われました。』
そんなご相談をいただくことがあります。確かにリフォーム番組などを見ていると、壁を剥がすと木が腐っていたり壁の中が真っ黒にカビていたりしてますよね。それにシロアリに食べられて穴だらけになっている事もしばしば。ある番組では、『木は腐るものだけど取り替えられるからいいんだ』と言っている大工さんもいました。
こんな話が耳に入ると、やっぱり不安になりますよね。
でもそんなことはありませんよ。木の特性を知り、腐る原因を理解し、定期的に点検することで木造住宅は長持ちさせることが出来ます。しかも安価に簡単にです。
木が劣化する原因は腐れとシロアリ
木はなぜ腐るのでしょうか。腐ったりシロアリに食べられたりすることを劣化と言いますが、劣化する原因は次の2つ。腐れとシロアリ。この2つの対策ができていれば、建物の劣化が急激に進むことはありません。では、どうすれば腐れとシロアリから木造住宅を守ることができるのでしょうか。
木が劣化する要件は『水』+『温度』+『酸素』。これらがある条件で整うと、腐朽菌(いわゆるキノコ)が発生し気を養分にして成長していきます。また、水を含んだ木材を求めて何処からともなくシロアリがやってくるのです。これらを防ぐ方法は、どれか1つでも無くすことですが、どれも生活には欠かせないモノなので難しいのです。
結果的に日本の住宅は長持ちすることはなく、約30年という短いサイクルで建て替えを繰り返しているのです。
木材を劣化から守る
それでも木材を劣化から守る方法はあります。それは毎日木材に腐朽菌がついていないか、シロアリが侵入して来ていないか点検することです。少しでも腐朽菌が見つかったら取り除く、1頭でもシロアリを見つけたら駆除する。これだけで木材の劣化は防げるのですが、毎日点検するなんて難しいですよね。それに、床下や壁の中に隠れている柱を点検するなんて不可能です。
では、どうすればいいのでしょうか?
そこで見つけたのがホウ酸による木材劣化対策。木材の劣化対策方法としては、他にも防腐剤や防蟻剤があるのですが、そのほとんどが農薬と同じ成分なので人体への影響を考えると使いたくない方法です。それにその効果は一時的なもので、数年おきに薬剤を床下に蒔かなければならないとのことなので、選択肢から外れました。
一方で、自然界に存在するホウ酸で木材を長持ちさせることができるんなんて、安心だし天然素材なので安心ですね。ただし、正しい施工(用法・用量・濃度)を守らないとその効果は望めないということなので、実際の対策現場を見学することにしました。
合わせて読みたい→それでも建物の中に農薬を撒きますか?
木材を長持ちさせる方法はこれだ!
今回、取材に協力していただいたのは日本ボレイト株式会社さま。一級ホウ酸施工士による新築工事の施工方法を見させていただきました。約30坪の住宅の1階部分を施工していましたが、施工にかかった時間は2時間ほど。とても手際よく施工しているので、見ていて飽きませんでした。
それでは、施工の手順を見てみましょう。
ホウ酸溶液をつくる
ホウ酸は冷たい水には溶けないようなので、40度以上のお湯をつくってそこに規定量のホウ酸を溶かすそうです。現場には水を温める機会なども持ち込まれており、常に決められた濃度になるように気をつけているそうです。この日は気温が10度にも満たなかったので、そのままだと規定量の半分も解けないとのことでした。
水が掛かってはいけない柱などをビニールシートで養生する
水が掛かってはいけない部分を1ヶ所ごとに丁寧に養生していきます。担当の方曰く、『自分の家と思って施工しています』とのことでした。とても素晴らしいことですよね。
シロアリの侵入経路を断つ
シロアリからの一番の防御は、建物への侵入を防ぐことです。2、3cm程度のほんのわずかな隙間でも、1cmにも満たない大きさのシロアリからすると、それは大きな入り口として見えているのです。この現場では、専用のコーキングを使って家の周りをシールしていて家の周りを確認してみたのですが、どこも隙間なくしっかりとコーキングが施工されていました。
『これくらいでいいだろう』という考えは、大きな代償を払うことになりますよ。
ホウ酸溶液を木材に浸透させる
木材を長持ちさせるには、ホウ酸を木材に浸透させる(染み込ませる)事が必要です。施工士の方に聞くと、しっかりと木材に浸透させるには噴霧するホウ酸の量が大切とのことでした。この量が足りないとシロアリに食べられたり、木材が腐ったりするので一番気を使うそうです。
日本ボレイトでは指定の施工研修を受け、テストに合格した人が施工するそうなので安心ですね。
他ではやってないそうです
施工士の方に気をつけている事をお聞きしたところ、『ここは大丈夫かな?』と思われるところがあれば、しっかりとホウ酸処理をすることだそうです。例えば、基礎を貫通する配管などがあればその周りはしっかりと隙間を埋めていました。※ホウ酸が含まれている専用のフィラー(充填剤)とコーキングを使っているそうです。そして、床の下地になる合板についても表裏だけでなく側面にもホウ酸を染み込ませていました。この丁寧な施工には驚きましたね。
正しく施工されているかチェックする
これだけ丁寧に施工しているのだから問題は起きないと思いますが、今回取材した日本ボレイトさんの場合は、特殊な試薬を使って規定通りに施工されているかチェックをしていました。ボレイトチェッカーと呼ばれる試薬を柱に吹き付けると、オレンジ色をした試薬が、写真のように次第に赤くなっていきました。ここまでやるからこそ、安心して任せられるんですね。
でも、農薬を使っているメーカーさんの薬剤は最初からオレンジ色をしているので注意が必要です(ある意味で農薬の証です)。
[注意]こんなシロアリ対策はダメ!
取材した現場の周りを見て回ると、取材現場とは違うやり方をしているところがいくつもありました。大丈夫かな?と思えるような場所もあるので、これから家を建てる人はよく調べたほうがいいですよ。写真は薬剤の塗り残し(施工ムラ)のある住宅。そもそも農薬を使っているので人体に影響が出るのでお勧めできませんね。もう1つの写真は基礎を貫通するパイプの隙間を埋めてない住宅。これではシロアリが家の中に侵入しかねませんね。このような施工では建物が出来上がってからでは2度と木材の劣化対策はできないので、注意が必要です。
木は濡らしてはいけない
木材の劣化対策を完了した後は、ホウ酸処理をした場所をしっかり養生(ブルーシートなどで)することが大切です。せっかく劣化対策しているのに、木材を雨ざらしにすることは本末転倒。これから家を建てる人は、外壁が出来上がるまでしっかりと養生されているかを見ておくといいですよ。
今回の現場の場合、家全体をブルーシートを使って養生されていたので、とても良い状態でしたよ。
まとめ
木造住宅を長持ちさせるにはどうすれば良いのかという疑問から始まった今回の取材でしたが、施工現場に密着して見て、改めて見えない部分こそ手を抜かないことが大切だと感じました。出来上がってしまえば、どんな家でもそこそこの仕上がりになるので、普通の人には建物の良し悪しを見分けることはできません。それが建物の見えない部分であり、見えない脅威(シロアリや腐朽菌)となれば尚更難しいものになります。
一生に一度の家づくりですから、建物を支える木材をどのように長持ちさせようとしているのかをしっかり確認することをお勧めします。
『この住宅の劣化対策について教えてください』
この一言を必ず住宅会社へお伝えください。どんな方法で家を長持ちさせるのか教えてくれるはずです。
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